それぞれの道

恋愛は就職に似ている。


僕が付き合っていた彼女は、皆の人気者で高嶺の花的な存在だった。美人だったし、芸能活動をやっていて結構お金も持っていた。手料理も美味しかった。特に彼女が時折見せるイタズラっぽい笑顔はそれを見た皆を魅了する力があった。僕は彼女のことを誇りに思ったし、そんな彼女と付き合っている自分も誇りに思ってたのかもしれない。


それでも、そういう幸せは長くは続かなかった。人は長いこと一緒にいると見た目やお金よりももっと深いところの価値を見いだし始めるからだ。付き合う前には考えられないぐらいいろんな話をした。お互いの将来の話、人生で何が重要だと思い、何に価値を感じるかという話。こういうことをするとお互いの絆がより深まったりするのかもしれないけれど、僕達の場合はより互いの違いに気づいていく結果になってしまった。

まず、彼女は友達を数で判断するところがあった。周りにいる友達の数が多い人を慕い、そうでない人を軽蔑した。僕は少ない友達でもそれが信頼できるものであればそれで良いと思った。また、親が厳しいらしく、どこに遊びに行く時も何する時も親に許可をとっていた。別に悪いことだとは思わなかったけれど、やっぱり窮屈だとは思った。

そういうことが原因で喧嘩をしたこともあった。けど大抵はお互いを傷つけないために話に火がつく前に言葉を飲み込むようになっていた。ちゃんともっと時間をとって、話しあう時間を作ればよかったのかもしれない。諦めずに歩み寄る努力をし続ければ良かったのかもしれない。ただもう自分にはどうすれば彼女に僕の言葉が届くのかわからなくなっていた。


彼女の魅力は今でも変わらない。ただ僕は、少し距離を置いて彼女に接し、彼女と付き合ったことで気づいた自分の価値観を基に、新しい出会いを探したほうが良いと思った。



・・・ということで、僕は昨日Googleを辞めました。



これから何をするかは、ある程度考えはあるが、まだ決まってはいない。時間はたっぷりある。ただ、Googleで感じた、Googleではできない世の中の問題に本気で立ち向かえるような場所に行きたいと思っている。